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番外編

番外編その2

2010年   NEW

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仏相な世の中、日本の中

―フランス在住ただいま帰国中―
                                                                                            小畑 リアンヌ



-大人の自覚-その1 

 今、娘はパリで暮らし、 これから先アメリカへ移住してしまう可能性もある。

 というのは娘は19歳のとき交換留学であの“イチロー、ナンバーワン”がいるシアトルへ行った。そこで知り合ったアメリカ人とその後東京で修士の交換留学生として2年間住んだ。息子といえば一年のオーストラリア留学を終え今モンペリエでエンジニアの学校に通っている、春には研修でカナダへ行くかもしれない。

 そうなると私がいつの間にかここフランスに流れで滞在してしまったように彼らもまた自分が見つけた気に入った地に“永住する”という可能性もなきにしもあらずである。

 66億の人口がひしめいている地球はもう狭くなってきている。

 こんなことを書くとへえ随分インターナショナルなんですねと冷やかされそうだが。周りを色々な国に囲まれた国民にとってたいしたことではない。昔から、かの有名なイタリア生まれのマリー・アントワネットと言う王妃をオーストリアから迎えたり、それぞれの思惑で他国とつながっていたフランス。以前にも話したがフランスの学生は虎穴に入らずんば虎子を得ずで、最終学年は殆どを外国で研修をするのが今や当たり前になってきている。

 となると外国人の私がなんでこんな差別、いや区別の国フランスに居残る理由があるのか。無理して不便な生活することもない。

 フランスでは18歳になると一応成人ということになるので、親元を離れるものが多い。日本のように成人式なんてない。が、成人式なんてものは要らない。彼らの頭の中はまさしく成人で、成人式用の着物や背広などがなくとも立派に自覚する。なぜだろう。

 会社に入っても入社式もない。学校を入学しても入学式もないし、卒業式もない。

  また、新卒枠という特殊な就職先もないから、卒業した時点でその他大勢となる。となると企業は経験者を優先する。

 アメリカには卒業式はあるようだが。要するに自覚の問題でそんな必要もないと言う考えだ。日本から来たものにとっては実に寂しい。が今考えるとそんな体裁はいらないのかもしれない。しっかり自覚すればいいだけのことである。

  しかもそうなる彼らはお金にもシビアなので親としては銀行預金も以前はマル優を使って子供の方にも預金をしていたが、子供が
18歳になる前に2万円ぐらいだけをお小遣いに残し、全部下ろしたことがある。こうしないと彼らは銀行に行って、今度は親が預金を動かせないように手配できるのだ。当たり前ではあるが。というよりこっちの方がシビアかな。

150ユーロだけ残しておいたからね」と銀行へ行った帰り娘に言うと、

 彼女からの返事は、

「全部、下ろしてくれればいいのに、でもありがと、もらっとくわ」であった。

 娘が成人になってからというもの、一週間と一緒に住めない、頭にくる、離れて暮らせればなんとなく仲がいい。だから少し離れて暮らそうと思っている。

 というよりか、フランスの子供達は18歳を過ぎたころからひとり立ちを始める。いくら親が金持ちでも、アルバイトをしながら自分の力で大学へ通う子供の方が今のところ多い。まあ、国も学生達にあらゆる支援をする。住居、学費、あるときは生活費まで。

 日本の学生もフランスに来て住居手当を申請する。 それに対して現地の日本人同士が賛否の討論をすることがあるが、そのとき不思議なのが、日本人は日本人に厳しいということだ。 こんなところまで来て申請なんてという人もいればどこが悪いとくってかかる申請した日本人もいる。 私から見れば朱に交われば赤くなるで自覚を持ってフランスの学生になればいい。と思う。自分の都合だけで頂けるものだけはもらっておこうとしながら、いざ学生の集会には「解らないから」「日本人だし、ここはフランスだからやめとくわ」という人がいるから理解されないのではないか。

 やるなら最後までやってほしい。と同時に大人としての尊厳も持ってほしい。まあ日本の不毛な議論をする政治家も尊厳を持ってやっていただきたい。

  変な話、今も昔も日本を救えるのはこういった自覚を持って成長した大人ではないだろうか。

 話はまじめに長くなってしまったが、日本にもどろう。最初のころ難波まで出るのに、十三から阪急で梅田までが150円、梅田から地下鉄に乗り換えてが230円となると往復で760円結構かかる二人で1520円、これはいたい。

 息子が帰ってしまったあと、急いでもしたかがないし、地下鉄にはもううんざり、女性用の専用の車両もあったが、あれって何?痴漢対策だとか。不思議な国である。まあ、痴漢に出会う年齢でもないが、空いているので乗ることもあるが。

 折角生まれた地に舞い戻ってきたのだから、景色を見ながら行動したい。そう思うとバスが目に入った。そうだこれに乗れば大阪の街を見ながら色々なところへ行ける。しかも初めの日は気づかなかったのだが1週間ぐらいして、この市営バスは大阪市内2時間ぐらいなら同じ料金だった。というより乗換えが一回出来た。それからは毎日のようにバスに乗ることにした。難波まで約二倍以上の時間がかかった、でも安いし外の景色が見れるからまあいいや。

 “安アパートをさがして南へ歩く~“

 そんな中ある光景が毎日見られるようになった。バスに乗る人は殆どが70歳以上、

  バスの座席がその為か何席もいやバスによっては半数近くが優先席になっていた。

  彼ら老人は言っては悪いがここであえて言わせてもらうと実にモラルに欠けている人が多くなった。すみませんえらそうに。

 そんなはずではない筈、自分でも疑った。が、やはり言わせてもらうと年寄りである。だから、並ばなくともバスが来たら先に入る。どちらにしても優先席があるのだから先に入るのは当然。としか言いようのない人が大勢いる。

 今日もバスに乗っている15人ぐらいのうち、わたしと同年代の女性と若い人がたったの二人。梅田に着くと、最初にわれもと急いで降りようとするのが緑のカードを誇らしげに持った人達。ピッ、ピッとカードを置き、でもやり方がまずくて運転手がいちいちやり直さなければならない。ゆっくりと下りていく、それじゃ最後に降りればいいのにそうでもない。

 でも、仕方が無い年齢が行くということは大変なことだと思う。やっとわたしの番、200円、100円玉を二個を入れる。あれっ、お金を払ったのはわたしともう一人の若い学生のような女の子だけか。つまり、75歳以上は無料らしい。へえ、ここ大阪もフランスのように社会主義的なんだと少し感心したが。

 今や彼ら高年齢者は町中に存在する。しかも見かけは本当にお若い、可愛い方もいらしゃる。

 ある日、

 「すんません、カード、家に置いてきちゃったわ」

 「困りますよ、お客さん」

 「そやかて、忘れたんやから」

 「じゃあ、こんどは忘れないように」

 「よいしょっと」

  おっと、ちょっと待った。

 運転手は時間をそんなに割きたくはないらしい。しかしこれはいただけない。忘れたのは仕方がないにしても、人情じゃああるまいし、ここで許してどうする。人情をかけるときはもっと本当にやらなければならない場面ってあるはずだ。この場合は間違っている。

 「今回は忘れたあなたが悪いのだから払って次からは忘れないようにしてください」だろ。

 でも、私はさすがにお年よりにそこで言うには躊躇したのでこの場を借りて言わせてもらいたい。後からしっかり自分のお金で払うものにとっては何でと言いたい。

  税金を払っていないからだよといわれそうだが、ちゃんと消費税は払っている。

 フランスの消費税は高いが、食品、工事費用などに関わる生活消費税は5.5%である。いつかNHKの討論の場で消費税の話が出たが、テレビや車や高級品には19.6%つくが、勘違いしてもらっては困る。また、イギリスでも不況の中、消費税率が下がる話が出ているし、フランスも、食品関係としてつまりレストランの消費税も5.5%に下げる話が出ている中で逆境を行ってあげようとしているのが日本であることが不思議で仕方が無い。社会保障をしっかりやった後での話ではないか。

 もうひとつ言わせてもらえば、フランスでは義務教育課程の子供達はもとより「失業者」の私にも、住んでいる町の市の交通機関は一切無料で乗れる。美術館もただである。年齢に関係が無い。無論70歳からも、無料であるが彼らはあまりバスで見かけないのはどうしてだろうか。

 

                   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

-大人の自覚-その2 ロンドンで

 これからロンドンでの話と交えてしたいと思う。

 以前、ロンドンに家政婦と言うより、ある日本人学校の寮母に応募して面接に行ったことがある。ロンドンに着いて何回か電話したが、切られる。カードを買ってはまた電話、日本語で切らないでといったらやっとつながった。ある教頭先生の家だったらしい。息子の歯医者があるから土曜日に会いましょうと言いながら、その日には来なかった。約束の場所で何時間も待った。また、電話するとまた切られた。本当だったらもうとっくにあきらめてしまうところだろう。わざわざフランスからメールで約束を取り、ついたら電話するように言われ、電話すると何度も切られる。これはいったいどういうことか。

 やっと次の日曜日に会えることになり、一応OK。そしてまた、わざわざロンドンから離れた電車とタクシーで次の週に今度は校長先生とあってほしいと言われ出向く。2時間ほど時間をとり契約ということになり。後はまたメールでと落ち着く。そして一人、またタクシー電車と乗り継ぎ、ロンドンに戻る。言っておくが別に学校から一切交通費は出ていない。こういう面接の場合フランスでは法律上一切の交通費は出る。

 

結局、フランスへ帰ってきてから、働く時間数を契約書に明記してほしいとメールしたら、「今回はあなたも大変でしょうから、なかったことにします」と一方的に断られた。大変だったら、わざわざイギリスまで面接に行きやしない。

 ロンドンのピカデリー広場の近くには日本人専用のお店が2件ある。面接の帰り、ついでなのでここで買い物することにした。地下には日本人専用の本屋があり、掲示板も設けられている。

 掲示板のところでは若い学生のような女の子が、貼られている住居やアルバイトなどの紙切れに見入っているところへ65歳ぐらいの長いコロンボのようなコートを着た小柄な日本人男性が話しかけている様子。でも日本人は若く見えるから本当は70歳を超えているかもしれない。

 答えもしないで若い彼女は何かをひかえているがその男性はお構いもなくずっと話しかけ続けている。彼女の目と私の目が一瞬あった。彼女は私に助けを求めていた。

 同じ年の子を持つものとしては放って置くわけには行かない。それとなくコロンボさんに質問してみることにしてこちらに気を引かせることにした。若い女の子は目で感謝をして頭を下げて立ち退いた。そばにいたもう一人の女性も気付き笑っている。

 「すみません、お詳しそうなので、イギリスでは就労賃金はいくらかご存知ですか」とたずねてみた。

 彼は先ほどから若い女性に近づいては自分はロンドンで「学生」をしている。もし仕事がしたいんだったら、こんな掲示板より人材派遣へ行った方がいい。僕も「学生」としてアルバイトしたいんだがどこも雇ってくれないんだよ。「学生」なんだから何時間か働けるはずなのに。と愚痴を彼女らににこぼしていたので、彼女達は笑っていたのだった。

 「アルバイト賃金は知らないが、派遣会社に行けばわかる。教えてあげるよ」と言うや否や私の持っていた紙を取り書き始めている。

 「いえ、もういいです。アルバイトは見つかっていますから」アルバイトではなかったが。

 「ええ、なんで、あんたは働けるの?」「何でえ」

 「はあ、」

 いちいち説明することでもない。私の場合、ヨーロッパ圏内(ECC加盟国)は働ける労働許可証を持っている。でもいう必要は無いだろう。

 別にそんなためではなかったがまあいい、ここはうまく彼女から引き離すことが出来たのだから、、、だが、だが、それからが大変だった。今度は私にしつこく話しかけてきた。

 「はい、ありがとうございました。」

「そうなんですか」

「はい、わかりました」

「大丈夫です。ご親切に。」

「ありがとうございます。もう結構です」

 何度も、何度もお礼を言ったがこの方には通じない。あきらめてこちらも掲示板を無言で見ることにした。するとやっと彼は真ん中に置かれたソファに疲れたのか腰掛けた。

振り返ると寂しそうに頭をさげている。その後姿にもう一度、

 

「どうも、ありがとうございました。失礼します」

と、一階の雑貨品置き場に出ようとした。

 すると、彼は猛烈な勢いで追いかけてきて、肩をつかみこう言ったのだ。

 「この野郎、そんなに気に食わないか。ありがとうのひと言も言えぬのか」-私は野郎ではないが、と思ったが、

 「失礼じゃないか、人に派遣業者まで聞いておきながら、この野郎」-野郎じゃないってば。

 と思っていると私の持っていた鞄を取り上げ、中から勝手に紙を出しボールペンで塗りつぶし、破り捨てたのであった。

 店の人が飛んできた。ここで問題を起こしても 何もならないし、そんな気力もない。ばかばかしい。勝手に話して勝手に、キ、レ、な、い、でほしい。しかし、何も言えないで帰るあまちゃんでもない。フランス流にこっちは切れる論理を持って言ってみる事にした。

 「ちゃんと、ありがとうございますって言ったんですよ。聞こえなかったのですか」

「それに私だけがあなたの話しに耳を傾けてあげたのではありませんか」

「他の方は笑っていたのですが、私はあなたを一度も笑わなかったのですよ」

 本当だった。彼を笑うつもりもなかった。その言葉に彼は自分を取り戻して、おずおずとまたソファに戻って行った。

 店の人は最近変な人がいるから気をつけるように私にささやいた。その後一階で一人用の中華鍋の買い物を済まし、バスでベッドと机だけの借りていた狭い寮に帰った。

 老い木は曲がらぬかも知れないが、もし彼が人の話を聞ける人なら、旅の出会いは大切にしたいし、日本人だし、お茶ぐらい付き合ってもいいと思っていたが。年金者になって住みたかったイギリスへ来たのかも知れないが、あのお年で「語学学生」という割引を使おうとするその卑しさに負けてしまった。けちな私が本当なら感心するが、この場合情け無い。フランスのお年寄りは堂々としている。あるときバスで席を譲ろうとすると

 「まだ、まだ、背が伸びたいので立っていることにします。でも、ありがとう」

と答えられたことがあった。

 そのときは「いやみ」だなと思ったが、いかにも自分は年寄りだだから権利がある。若いやつらは情け無い。俺が稼いできたお金だ。自由に外国へ行って使ってやる。では本当に情けない。あなたは大人の大人ではないか。

 私はきっと死ぬとき子供に何もたいしたものを残さない。でも一番残さないのは負の遺産だと思っている。勘違いされては困るのでここではっきり書くが、遺産と言ってもそれはお金を示しているのではない。もし私があの59歳の女性ではないが自殺したら、子供達は一生悩まなければならないだろう。

 「なんでや、おかあちゃんが僕らを残して自殺せんなアカンね」

 とは言わないが。つまり、これからの将来のある若者には少なくとも私たちが作った苦しみを残して死にたくはない。彼らは彼らの別の苦しみがあるのだから。そう今こそ、この世界の一大事、大人たちが向かわなければならないものは何なのか真剣に考える時が来ているのではないだろうか。

 おっと、また変なお節介のようなことを言ってしまった。ただのオバハンに戻ろう。フランスに帰る飛行機がなぜか、ボーディングパスをもらった後なのに2時間ぐらい遅れた。もしやスーツケースに入れた中華なべが反応をおこしたのか。なんて、 気の小さい者は考えていた。

 


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